『たやすみなさい』ができるまで

先日書肆侃侃房の現代歌人シリーズから岡野大嗣さんの新著『たやすみなさい』が発売されました。装丁、組版まるごと担当したので、ここでは主にカバー制作の流れを書こうと思います。

①ラフに入るまで

まずはカバーイメージの方向決め。誰がディレクションをするかはその都度ですが、本書の場合は著者・岡野さんとイラストレーター・安福さんの間で「シンプルな線画イラストを箔の加工でインパクトを出す」といった感じで既になされてました。

②ラフ制作

カバーイラストの本描きが届いてからは具体的なラフ制作。今回は大きく「打ち文字タイトル案」「作字タイトル案」「縦書きタイトル案」で3案練りました。背景は紺か黒か決まってなかったので、そのバリエーションを作って岡野さんに送付。で、その中から「打ち文字タイトル案」「背景は黒」ということに。ちなみに日本語タイトルはモリサワの「A1ゴシック」、英字タイトルはAdobeの「Adorn Garland」使ってます。
肝心の箔は、「価格のことはとりあえず気にせずやりたいことをご検討してください」という岡野さんからの御言葉もあって、ぜひホロ箔(透明)でいきましょう、となりました。憧れのホロ箔。。。普通の箔より3倍高いという噂。。。

③ブラッシュアップ

案が絞られたらあとはひたすらブラッシュアップと微調整。プリントアウトしたものを本に巻いて見栄えをチェック、それと同時にネット上でもちゃんと見えるかを仮Amazonサイトにレイアウトしてみてチェックなど。タイトル等のフォントサイズや文字間をひたすらチマチマいじって落とし所を探します。

④色校

その後何度かのやり取りでデザインが完成! 次は色校! いよいよホロ箔(透明)。
版を作る箔は校正後の修正が難しいので、イメージを高めるために事前情報をgoogleで検索、、、うーん、いくら探しても全く出てきませんでした。ホロ箔高いですからね。。。
唯一頼れたのがSTARBOOKSのレビュー欄でした。同人誌で使う方が多いんでしょうか、すごいっすね。。。
僅かなネット情報、印刷所からの箔見本、手元のダミー本からイメージを膨らませ、、、膨らま、、、膨ら、、、まなかったので、急遽無理をお願いしてホロ箔の2種(透明と銀)校正にしました(もちろんその分費用かかってます。。。)。

⑤完成!

そして上がってきた校正のうち、岡野さん、安福さん、印刷所みんなの意見総一致で銀ホロ箔に決定。採用したのは「リフレックスセレクト(シルバー)」。当初予定してた透明ホロ箔は思った以上にお淑やか。そんなこんなで超きれいな仕上がりになりました。2種校お願いしてほんと良かった〜。。。
箔を引き締めてる背景は、黒より黒い墨インキ「サタンブラック(T&K TOKA)」。印刷所で聞いた話だと、T&K TOKAのサタンブラックと他メーカーのスーパーブラックはほぼ同じ黒さで(価格も今回の部数だとほぼ同じ)、T&K TOKAでは「デビルブラック」が青口でより黒いとのことでした。奥深き箔とインキの世界。。。箔や黒インキの比較は「デザインの引き出し #6」や「#19」あたりを参考にしました。

⑥祝・即重版!

発売から一週間たたずに即重版決定したようで、超おめでたいです。
中の短歌の組み方も挑戦的だし、特典でピックやポストカードもついてるし、パネル展と原画展も色んな所でやってるしで、楽しみ方盛りだくさんの一冊になってます。HIBIYA COTTAGEでは11/14まで原画展、11/10にはサイン会もあるようです!