『バームクーヘンでわたしは眠った』ができるまで
8月末に春陽堂書店から柳本々々さん(文)と安福望さん(絵)の共著『バームクーヘンでわたしは眠った』が出ました。春陽堂書店サイトで2018年5月から毎日更新された川柳日記をまとめた一冊です。この本ではデザイン・用紙選び・印刷指定まで関わったので、流れを踏まえて制作過程を書きました。
制作前① 判型・製本仕様
まずは判型と製本様式決め。といっても、「日記を束ねたようでイメージにピッタリ」という安福さんの話からすんなりコデックス装になりました。判型はA5判の縦を20cm短くした変形。
コデックス装は糸かがり綴じの背表紙なしバージョンなので180°パッタリ開く反面強度弱いそうですが、とりあえずカッコよいです。価格的には並製本と上製本の間ほどで意外と安い!
制作前② 紙・印刷
つづいて紙と印刷の決定。制作前や合間に候補を伝えて予算的に可能かどうかを確認しつつ、難しければ変更します。今回カバーに選んだのはタータンチェック柄のエンボス紙。帯はトレーシングペーパー。かわいい組み合わせになってます。本文紙はいわゆる紙不足問題もあってb7ライトからb7トラネクストに変わりました。それにしてもよく定価1,800円で収まってるな、、、って印象です。
銘柄と印刷は最終的に下記。
—
● カバー…TS-9(N-8・46Y・130kg)/4C/グロスニス
● 帯…クラシコトレーシング-FS(AT目・74kg)+Bk
● 本体表紙…大和板紙ブラウン(230g/㎡)/DICシルバー(2度刷り)
● 見返し…紀州色上質(厚口)/プロセス2C
● 本文…b7トラネクスト(A判T目・53.5kg)/プロセス4C
制作① 本文組み
仕様が固まったら具体的な制作へ。本文は全100編とちょい、句ごとに量まちまちのテキストをイラストとともにフォーマットに流し込み、ひとまず他者チェック、、、でも反応いまいち。。。
う〜ん、と蔵書を漁ってると「どろんころんど(福音館書店)」(cozfishがシリーズでデザインしてる本。装丁も本文組みもいろんな遊びがあって超素敵)を発見。んじゃこんな感じで自由にやってみよう、と思いたつもやり方がわからず。。。。。。そこを気合でなんとか、ウネウネグルングルンできたのでもういちど見てもらって、、、断然こっちが良い! ということでなんとなく固まりました。
一通り作って安福さんに送付。
制作② カバーまわり
本文同様カバーの材料も既にあるので、打ち文字、バームクーヘン文字、その他手描き文字、それらを水平に流したりアーチ状にしたり、カバーを短くして本体表紙で見せたりなどしてひたすら制作。中央の大きい円要素と15文字のタイトルに意外と苦労しつつ、作ったうちの5案ほどを一旦送付。
案が絞られたら、できる限りタイトルは大きく/余白を残して空気感を維持/タイトルとイラストのまとまり、みたいな点を意識して修正を繰り返しひとまず完成。
カバーからチラッと覗く本体表紙は描き下ろしです。直前まで紙と印刷が決まってなかったものの、送ったラフ案のうち色付き板紙+シルバーインキの組み合わせに。ちなみに焦げ茶の板紙はバームクーヘンの焼き色を意識してます、伝わらないと思いますが。。。本体表紙を1Cにした代わりに、カラーバージョンを見返しに刷ってもらいました。
直前まで決まってなかった帯はカバーのイラストが隠れないようにトレーシングペーパーに決定。これもよく通ったなって印象ですほんと。デザインはブラック1色でシンプルな仕上がり。
校了〜色校
ふーっ、全部オッケー出たらいよいよ色校。でもその前に確認!
カバーも本体表紙も帯も初めて使う&特徴のある紙なので、仕上がりイメージを掴むために竹尾見本帖でカバー・帯と同じ紙を購入、キンコーズで出力して確認。板紙とシルバーインキの組み合わせは自分じゃ確認が難しいので、大和板紙東京ショールームにお邪魔して現物を見たり質問したりしてきました。
なんとか大丈夫そう! 東京っていろいろあって便利〜。
上がってきた色校は、不安だったプロセス3C掛け合わせのタイトル部分も全く問題なしでした。
そんなこんなで無事完成! 印刷は惠友印刷さんです。
パネル展等開催中
発売されてもうすぐ2ヶ月ですが、まだまだ全国の書店でパネル展が開催中のようで、さらにもうすぐ原画展もあるみたいです(情報がまだ出てないみたいですが)。原画展が恵文社一乗寺店にて11月19日まで開催中のようです。先日発売された岡野さんの『たやすみなさい』展も合わせて、安福さんいろんなところで色々やってます。