【お客様インタビュー】仲良く、楽しく、忙しく。家業と地域の未来に向き合う2人(新潟県・大島鉄工所)

① はじめに 〜“似てない兄弟”のユニークな挑戦〜

弟・真之さん(左)と兄・健さん(右)
弟・真之さん(左)と兄・健さん(右)

 先々々々⋯⋯日、新潟県長岡市三島地域にある大島鉄工所へ取材に行ってきました。お相手は、家業を営む大島健(たけし)さんと弟の真之(まさゆき)さん。1947年創業の老舗企業である大島鉄工所は、自動車・農業機械・除雪機の販売や整備などを通じて、地域の人々の暮らしを支え続けています。
 こまゐ図考室では2022年に、朝野ペコさんの似顔絵を使った名刺(ご兄弟+お父様の3名分)を制作させていただきました。その制作過程では、ご兄弟の容姿ギャップや、芸能人と写るお父様の写真など、驚きの連続でした。
 その後名刺に続き、「似顔絵名刺をコンプリートしたお客様にプレゼントしたい」と手ぬぐいの制作をご依頼いただき、さらには「かわいい米袋を作りたい」というご相談をいただいたり。社名からは想像もできないようなユニークな取り組みを次々と仕掛ける大島鉄工所が、一体どんな会社なのか、そしてお2人はどんな方なのかが気になり、直接お話を伺うことにしました。

② 会社の歩みと今 〜車屋だけど鉄工所〜

点検整備作業場

真之(弟):創業は1947年で、当初は鍬などの農具を作るまさに鉄工所でした。鉄骨でできたこの事務所や2棟の倉庫、奥にある工場も自分たちで建てたそうです。工場は思っている以上にでっかいです。

真之:父親が社長になってからですね。車が一般家庭で乗られるようになったり、農機具がエンジン付き機械になった時代だったので、それに合わせて自動車の販売が始まり、あれを直せないかこれも直せないかみたいなニーズから整備工場がスタートしています。
 このあたりは兼業農家の方が多かったんで、みんな家にでかい農業機械を持っていて。そういった、地域の人の生活を支える機械を扱う仕事が自分たちの軸になっていきました。今では兼業農家の方もほぼいないくらいに減って、代わりに専業農家として、もしくは法人化して規模を大きくしてる方が多いです。

工場内風景

真之:自動車販売ですかね。一般的な車を売ったり買ったり。新車で仕入れる時もあれば、中古車オークションで仕入れる時もあります。整備工場があるんで、車検まで行っています。

真之:そうですね。地域のじいちゃんばあちゃんから「何かいい車ないか?」って聞かれたり、車検の時に「そろそろ修理にお金がかかってきますね」とか「この先〇〇年くらい車乗るんだったら、このタイミングで変えた方がいいんじゃないですか?」とかいうような流れで買ってもらうことが多いです。決して押し売りはしません。性格的にできません。

大島真之さんと健さん

健(兄):農業機械でいうと、5月ぐらいまでは耕運機やトラクター、田植え機など田んぼの機械の販売・整備で忙しいです。今の時期(6月)だと耕運機の販売や買取査定に行くことが多いですね。お客さんのところに行って査定を出したり。あとは修理する場合の引き取りが多いかな。

真之:いらなくなった機械を手放す方から、買い取って、整備して。

健:それを過ぎると8月くらいまでは草刈り機や除草剤を撒く機械とかの販売・整備。秋になると稲刈りが始まるんで、稲刈り機の整備。それが終わる前くらいに除雪機の点検・整備が始まります。
 商品はシーズンごとに入れ替えるので、使わないものは保管してますね。保管したくないけど。買って欲しいけど。

農業機械

健:耕運機でいうと、コロナ前は5年に1回ぐらいのモデルチェンジだったのが、コロナの時に一気に値上がりして。中身は変わってないのに色合いが微妙に違うとか、ちょっとした機能をつけて5万値上げなど、2〜3年に1回のちょいモデルチェンジになりましたね。高けー、みたいな。

健:長いと20〜30年使うらしいです。壊れないんですよね。でも「もっと力が強い方がいい」と言って買い替える方もいます。ダメになったっていうより、もっといいやつが欲しいって。馬力が大きい方が仕事が早いですから。

③ 兄弟で描く企業ブランディング 〜“人”が主役の地域密着経営〜

健さん

真之:社長は、父親は…まぁ、いる、って感じですね。そして兄はマスコットキャラクター。

真之:兄の役職は専務です。僕はこのお店の店長。でも、やってるのは実質社長業。「こういう時代の変化がきているから会社はこういう風にやっていかなきゃいけないと思うんだよね。だからこんな風に頑張ってほしいんだ」みたいな経営計画説明会を年に1回やるんですけど、それは僕が1人で全部資料作って、1人で全部プレゼンしていく。会社の数字の管理も全部僕。

真之:「そういえば大島さんって何の仕事やってるんでしたっけ?」みたいな事が結構あるんですよ。きっと兄のそういうところがいいんでしょうね。そんな風に繋がりが広がって、結果的に会社の営業活動になっています。「大島さんて確か車屋やってましたよね」とか「どうせ頼むんだったら大島さんのところがいいよね」とか。商売っ気バンバンで来られたらみんな嫌がるでしょ。

健:私もだいぶ適当な人間なんで、仕事の話振られたらやだな、って。耕運機を納品する時も、お茶とお菓子いっぱいもらって帰ってきたり、買取査定に行っても10分足らずで終わった後に1時間ぐらいお茶させられるっていうのは多々。

世界えだまめ早食い選手権ポスター
毎年夏に開催される世界えだまめ早食い選手権ポスター

健:本当は内向的ですよ、ゲームと漫画が大好きなんで。今やってるゲームは“ペルソナ5”、漫画だと異世界に行って飯を食うやつにハマってます。

健:よう頑張ってるな、って。ちゃんとしてて助かるなぁ〜って。

真之:いい感じで棲み分けできているんじゃないかな、とは思いますね。

真之さんと健さん

真之:積極的に参加していなかった地域の集まりに行き始めると、「お兄さん知ってますよ」とか「真之さんって、健さんの弟さんだったんですか ⁉」みたいなことを毎回言われるんですよ。だったら最初から、「健の弟です」みたいにセットで売り出した方が早いなと思って。「2人全く似てないね〜!」っていう反応が来るんで、そのギャップも面白いかなって。

健:知らん間にセット販売になってた。ウェブサイトの兄弟写真も、「明日撮影だから白いシャツで来てくれ」って急に言われて。何の撮影 ??って。

真之:ウェブサイトを見た人が、なんか面白そうだな、頼みたいな、って思ってもらえるようにしたかったんです。この店は建物も古いんで、外面だけよくせずに現実とのギャップをできるだけ少なくして、お客さんとの距離を縮められるように。あとは、店がこんな感じの田舎にあるので、看板を見てお客さんがフラッと来ることはなかなかない。でも知り合いのところだったらわざわざ来るかな、っていうことで知り合い感を強めにしています。兄の繋がりで来てもらうお客さんがやっぱり多いですし。

健:ただ、被る交流を私はなるべく避けるようにしてます。せっかくお店をやっているので、そこは被らない方がいいなって。そうした方が効率いいし楽しいんで、意識的に。インスタもフォローしてないし。

健:相当珍しい。

真之:まぁ会社の飲み会以外ではね。

④ 継ぐのも、悪くない 〜兄弟が選んだ家業という生き方〜

車検場

健:当時は会社の中に家があったんですよ。

健:私は親から「継ぐもんだ、そしてお前の代で潰すんだ」って言われてた。じゃあ潰してもいいかな、って。

健:3代目が会社を潰すって、よくある話ですからね。でも実は私で4代目だったからちょっと違った。ひいじいさん、爺さん、父、私なんで。じゃあセーフかなって。ぎりセーフ。

健:就活は大学4年の時にしたけどピンと来なくて。その時に「帰ってきてもいいぞ」と父親から言われたので帰ってきました。どんな会社を受けたか覚えてないくらい適当だったんで、「友達もいるしじゃあ戻るか〜」ぐらいの。

真之:全然関わることはないなって思ってました。身近にありすぎて車に興味を持てなかったというか。嫌だったってわけでもないんですけど、そんなに意識してなかった。好きな事をやりたいなって。

真之:上京して専門学校に通った後は、就職せずにアルバイトをしてましたね。印刷会社でポスター作ったり、データをカッティング用マシンにセットして顔ハメパネルを作ったり。

大島真之さん

健:そうです。中越沖地震(2007年)があった時には一度弟から「帰ろうか?」って連絡があったんですけど、「地震なんて大丈夫だから帰ってこなくていいよ」って伝えました。

真之:「帰ってこなくていいよ、自分の好きなことやってていいよ」って兄が言ってくれて。

健:まあ何にも考えてなかったですけどね。

真之:わかりました!ってそれを素直に受け取って好きなことをしてたんですけど、20代前半頃に自分で商売してみたいなって思うようになってきて、何しようかな、こういうことやりたいなぁって、電車通勤しながら毎日考えてました。で、そのうちに「その前に何かやらなきゃいけないこと残してないか?」 って感じてきて、26歳の時に新潟に帰ってきました。

真之:「帰ってくるな」ってことは特になかったです。父親の当時の気持ちを想像すると、帰ってきてもらった方が助かるとは感じてたんじゃないかな。一方で心配もあったと思いますけど。続くのかな?とか。

整備中の軽トラ

真之:入社当初は会社に全く貢献できず、足を引っ張ってたと思います。そもそも機械に興味なかったので。だからまずは知るところからと、勉強して自動車整備士から始めました。しばらくして販売に携わるようになってからは、どうやったら集客できるのかみたいにだんだん数字を意識するようになり、今に繋がってます。
 働き出してみるとお客さんから言われるんですよ。「いやぁ、昔大島さんのところに散々お世話になって」「助けてもらって」とか「大島さんのところが良かったって紹介されて」とか。お客さんによっては「大島さんの収益に繋がる商品にしてください」みたいに応援していただく場合もあって。なのでその恩を返せるようにしたいっていう、責任というか感覚にはなりましたね。

農機買取チラシ

⑤ 鉄工所から“街の居場所”へ 〜地域に開かれた企業のかたち〜

大島鉄工所様の事務所

真之:大した用事がなくても立ち寄れるような何かを作りたいなと思っています。この地域はむちゃくちゃ田舎なので、フラッと行ける場所がないっていう声をよく聞くんです。なので、高齢者に限らず地域のいろんな人が寄ってくれて、お茶を出したりちょっと話ができるような。

真之:そうですね。飲食関係の方など、やっぱり兄の繋がりは多いので。

健 ある日突然知り合いから「行ってもいいか?」って電話があって。怖い怖い、急に困る、って思ったけど、やってみたら社員も意外と受け入れてくれて楽しかったんです。

真之:野菜の直売も回ってきてくれるんで一緒に何かしたり。そういう仕組みや環境をもう少し整えていって、一時的なイベントというより常設でそういった場が作れたらなと。
 ここで働き出した当初は、若いお客さんの後ろで高齢のお客さんがでかい声で喋っていることに違和感があったんですけど、自分たちの商売がディーラーと違った敷居の低いものなんだと気づいてからは、若い人だけ、じいちゃんだけっていうのではなく、双方が共存できる場所にしたらいいのかなって思うようになりましたね。両方いるのが当たり前っていう自然体な付き合いの方がお客さんも安心できる。コンビニじゃないけどコンビニ化っていうか。

健:学生さんとかともね、意外と繋がりが多いんです。

真之:もちろん集客面でここに来てほしいっていう思いはあるんですけど、そういう場所があったら街が活気付くかなって。地域を見ていると、高齢で継ぐ人がいない店もあるんですけど、ホームセンターとかショッピングセンターへの不満を言い続けて自ら潰していくような店も多い。でもそうじゃないんだよと思っていて。他にこういうやり方があるよ、田舎の立地でもこうやってうまくいったよ、っていう取り組みを自分たちが体現して、地域に派生できたらいいなって思います。

看板

健:コインランドリーを作りたいな。ここから車で10分ぐらい行かないとないんで。

健:リアルです。ほんとにやったらいいなって思います。あれば使うと思うんですよね。この辺り(三島地域)は長岡市の中でベッドタウン扱いなんで、近くに保育園はあるし小学校や中学校もある。でも周りにスーパーやコインランドリーがないのでみんなちょっと遠出するんです。

真之: 兄のこの発想が良いんですよね。「コインランドリー、あった方がいいじゃん」って。地域の人のリアルな声なんです。じゃあそれをきっかけにしてお客さんにこういう提案ができるんじゃないか?っていう、商売の部分を考えるのが僕の役割。

健:コインランドリーね、欲しい。

共用工具
工場の時計
三島地域の田園風景

⑦ 取材にご協力いただいた皆様

大島 健(おおしま・たけし)=大島兄弟・兄。1981年生まれ。2児の父。「世界えだまめ選手権」実行委員長。趣味は漫画・ゲーム・ご飯・お酒。https://edamame.world/
大島真之(おおしま・まさゆき)=大島兄弟・弟。1986年生まれ。2児の父。趣味は仕事。https://note.com/masaoshima
㈲大島鉄工所(おおしまてっこうじょ)=1974年創業。長岡市三島地域で自動車・農機具・除雪機を扱う会社。代表:大島 誠。従業員数:11名。〒940-2306 新潟県長岡市脇野町2268-2 https://oshima-web.com/ 

(構成・インタビュー・編集=こまゐ図考室、写真=朝野ペコmomo


⑧ 制作実績・お客様の声 〜企業の魅力を“カタチ”にするツールとして〜

◎「渡せばすぐに覚えてもらえる」武器になる名刺

大島鉄工所様名刺

大島鉄工所様の「人となり」を伝えるための名刺。朝野ペコさんの似顔絵を通して、「似ていない兄弟」のユニークさが瞬間的に伝わります。名刺交換の場で自然な会話が生まれる仕上がりで、営業ツールとして活躍しています。

◎「名刺をコンプリートしたくなる」限定手ぬぐい

大島鉄工所様てぬぐい

「似顔絵名刺を3名分コンプリートしたお客様にプレゼントしたい」というユニークなご依頼から生まれた手ぬぐい。「大島鉄工所って面白いことやってるな」という話題性を生み出し、お客様とのコミュニケーションをさらに円滑にするきっかけを目指した販促ツール

* あなたの「らしさ」をデザインで

こまゐ図考室は、単にモノを作るだけでなく、お客様の抱える課題や未来への想いを深く理解し、それをデザインで解決することを目指しています。あなたの会社の「らしさ」を、デザインで表現してみませんか? ぜひお気軽にご相談ください。